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Beauty Source キレイの魔法

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恋愛セミナー30【藤袴】

第三十帖  <藤袴 ふじばかま>  あらすじ

玉鬘は帝に心ひかれるものの、寵愛を受けることになれば父・内大臣の娘・弘徽殿の女御や秋好中宮から
疎まれることになるだろうと思い悩んでいます。
また、中途半端な状態で六条院にいることが世間から何と言われているだろうと考えるのも苦しく、
何とかして自分の身の潔白を晴らしたいと思うのでした。
源氏は内大臣に告白をしてからは以前よりもっと頻繁に迫ってくるので気を許すことができません。

大宮が亡くなり、孫である玉鬘も薄い鈍色(にびいろ 薄墨色 喪服の色)の衣をまとい
それがかえって美しさを引き立てています。
帝の言葉を伝えに夕霧がやってきました。
玉鬘よりさらに濃い鈍色を着て、手にした藤袴(紫の小さい花が咲く。秋の七草のひとつ)を御簾の中に差し入れる夕霧。
受けとろうとした玉鬘は花を離していなかった夕霧に衣の袖をとられてしまいます。

「この花の薄紫と同じくあなたと共に喪に服している私に情けをかけてほしい。」と歌にたくす夕霧。
玉鬘は気分が悪くなったと奥へ逃げてしまい、夕霧は、恋を打ち明けたことを後悔します。

夕霧は源氏のところへ行き、玉鬘が宮仕えをした時の女御や中宮の間に入ることの難しさや
兵部卿宮の落胆を示唆します。
「髭黒の右大将も内大臣に玉鬘と結婚できるよう頼んでいたのにとこちらを恨めしく思っているようだ。
玉鬘はしっかりしているので宮仕えにも、兵部卿宮の正妻にもふさわしいだろう。」と源氏。
夕霧は源氏の気持ちをはかりかね、源氏が玉鬘を宮仕えに出すのは表向きで
本当は愛人にするつもりなのだと内大臣が語っているらしいと伝えました。
源氏は笑って否定しますが、自分の考えを見抜かれてしまったことをいまいましく思います。

柏木は玉鬘が実の姉と知ってからふっつりと文を出さなくなりましたが、
ある日内大臣の伝言を持って訪ねてきました。
「実の姉弟だったのに恋の深い道に迷い込んでいました。」と詠む柏木。
「姉弟だったことも恋の道に迷っていることも知らないであなたの文を見ていました。」と玉鬘。
夕霧ほど整ってはいませんが、この柏木もとても美しく、魅力ある公達として並び立っているのでした。

髭黒の右大将は柏木の上官にあたるので、何度も呼び寄せては玉鬘のことを頼み、内大臣にも熱意を伝えます。
帝からも信頼されている髭黒の右大将なのですが、内大臣はやはり源氏の意向に従おうとしていました。
紫の上の姉にあたる式部卿宮の娘が髭黒の右大将の正妻なのを理由に源氏はこの結婚には乗り気ではないようです。

参内を控えた九月のある朝、玉鬘は密かに届けられた恋文を女房に読ませています。
「結婚にふさわしくないとされる九月。その九月にさえ恋に命をかけているはかない命の私。」と髭黒の右大将。
「帝の愛を受けても霜のようにはかない私のこの愛は忘れないで欲しい。」と笹に霜がついたままに届けた兵部卿宮。
「自分から望んで日に向かう向日葵も朝おりた霜を自分で消しはしません。
望んではいない私ならなおさら。」と返す玉鬘。
その他にもたくさんの文がきましたが、玉鬘は兵部卿宮だけに返事をしたのでした。

恋愛セミナー30

1 夕霧と玉鬘           美しい姉から従姉への思い
2 柏木と玉鬘           恋の残照
3 髭黒の右大将と玉鬘     無骨者が恋をすると
4 兵部卿宮と玉鬘        未練残して
5 源氏と玉鬘           実の父に公認されて


玉鬘を取り巻く男性達の織り成す心の動きが現われる帖です。
紫の上とも文を交わし、花散里ともうまくやっている玉鬘は女性にも好かれていますが、それにしても大人気。

帝をはじめ、夕霧と柏木という若きエリート、内大臣に次ぐ権力者と目されている髭黒の右大将、
優雅な兵部卿宮、そして源氏。
恋を楽しめる女性なら、冥利につきる面々ですね。

けれど玉鬘は悶々と悩み続けます。
内大臣の所にいけば、その他大勢の子どもに立ち混じり、所詮は近江の君と似た出自であることが際立ってしまう。
宮仕えをすれば、帝の妃たちがいる中にあとから割って入ることに。
今いる六条院では、源氏が実の父でないことが世間に知れたため、好奇のまとになっているのが苦痛。
彼女が求める場所は、いったい何処なのでしょうか?

女性にも男性にも好かれている玉鬘はなるべく波風を立てない、誰の顔も潰さないことを求めているようです。
聡明なので帝では内大臣方に、髭黒の右大将では源氏方に差し障りがあることを知っている。
夕霧や柏木では役不足。
姉から従姉に、またはその反対に、というややこしい事情があった以上に、源氏という美しさも趣味も権力も
誰の追随も許さない大人の男性を間近にみて審美眼が上がっている玉鬘には、彼らはとても恋愛対象にはならないのでしょう。

この消去法によって残ったのは兵部卿宮。
玉鬘は彼だけに歌を返すことで、身の振り方を自分では決められないこと、宮仕えは本意ではないことを知らしめるのです。
なよなよと相手に頼り合わせることで男心を虜にした母・夕顔と、
世間の風を省みずに源氏を訪ねた父・内大臣の実直さがあらわれていますね。

彼女の落ち着く先は何処でしょうか。


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